親と同居するだけでは寄与ではない!

寄与分

寄与分で後悔しないために

被相続人への、あらゆる貢献が寄与分として認められるわけではありません。高齢化が進む社会の現状では、一見して「介護=寄与」と捉える方が多数です。しかし現実は甘くありません。たとえば、夫婦間・親族間には扶助義務があり、寄与分として認められるには、通常行うと期待される扶助の範囲以上であることが必要です。また、無償(あるいはこれに近い状態)であること、相続開始前の行為であることも必要です。そして、財産の増加させた、あるいは減少を食い止めたなど、相続財産にそのものとの因果関係が求められます。
※これまでは、被相続人の親族が特別の寄与をした場合でも、相続人でなければ、原則として寄与分として考慮されませんでしたが、このような特別寄与者について、相続人に対して特別寄与料の支払いを請求することができるようになりました。これについては、下記の注意事項を確認ください。

献身介護だけでは寄与にならない!

ご注意ください

寄与分はなかなか認められない現実

寄与分が実際に認められた事例は、いずれも特別の寄与と呼べるくらいの寄与があったケースのようです。
また寄与分に法的な上限の定めはありませんが、そもそも寄与分制度は相続人間の相続分の調整のための制度であることから、一定の限度があるべきだとされています。過去に認められた事例においは、寄与をした側の立場からすると、「思ったよりも少ない」と感じる場合が多いようです。
寄与分は、共同相続人間の協議では多くはなかなか合意ができません。一方、家庭裁判所の審判では、法的に厳格に判断されるため、親を介護してきた相続人が報われない結果となるケースが圧倒的に多いのが現実のようです。

改正民法で特別寄与料の請求制度、しかし高いハードル…

核家族化や被相続人の高齢化により、相続人以外の方が介護をするのも当たり前になってきました。その対策として新設された特別寄与料ですが、その範囲は寄与分よりも狭く、「無償で療養看護その他の労務の提供」に限定されています。例えば義父の介護に尽くした長男の嫁が、他の法定相続人にの支払いを請求する場合が考えられます。
特別寄与料は、被相続人から「遺贈により取得した」ものとみなされ、通常の相続税にプラス2割(相続税の2割加算)が課税されます。また、特別寄与料の請求権は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき又は相続開始の時から1年を経過したときは行使できなくなります。もしかしたら共同相続人の遺産分割協議が終わらないうちに期限がやって来る可能性もあり、請求した途端、火に油を注ぎかねません。また、相続税の申告期限は10ケ月ですので相続税の申告が必要なのですが、そもそも相続人間の遺産分割協議が合意していないうちに、期限を迎えるケースもあり得るでしょう。
不公平感を解消するために始まった制度ですが、こうした問題点を考えると、完全に不公平感がなくなったとは言い切れないかもしれません。
相続人が複数いる場合には、特別寄与料の額に当該相続人の相続分を乗じた額を請求します。仮に、被相続人の子どもが二人いる場合には、相続分は2分の1ずつですから、「それぞれ」に特別寄与料の2分の1の請求を行います。特別寄与料のこうした細部は、まだ判例も確立していないため、今後の動向を注視したいと思います。

成人年齢の引き下げ

2018年6月13日に改正された民法により、2022年4月1日から、成年年齢が「20歳」から「18歳」に引き下げられました。

相続税と贈与税

未成年者控除

未成年者の年齢が「20歳未満」から「18歳未満」へと改正されました。
また、未成年者控除の額は、「満20歳になるまで」の残年数について、1年につき10万円で計算します。
これが「満18歳になるまで」へと改正されました。

相続時精算課税適用者の要件

この制度の適用を受けることができる者の年齢が、贈与の年の1月1日において「20歳」から「18歳」へと改正されました。

非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度適用者の要件

この事業承継税制の適用に係る受贈者の年齢要件が、「20歳」から「18歳」へと引き下げられました。

贈与税の税率の特例の受贈者の要件

直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率を適用する場合の受贈者の年齢要件が、「20歳」から「18歳」へと引き下げられました。

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度および結婚・子育て資金一括贈与に係る贈与税の非課税制度の受贈者の要件

この特例制度の適用に係る受贈者の年齢要件が、「20歳」から「18歳」へと引き下げられました。

婚姻年齢18歳統一

婚姻が可能となる年齢が男性18歳、女性16歳から、男女とも18歳となりました。
また、成人年齢と結婚年齢が18歳に統一されましたので、「未成年者の婚姻に父母の同意を必要とする」法律が廃止されました。

養親年齢

養親となるための要件が「成年に達した者」から「20歳に達した者」に改正されますが、養親になるには従来どおり、20歳以上の者です。

NISA・ジュニアNISA

NISAの非課税口座の開設をすることができる年齢要件をその年の1月1日において18歳以上に引き下げられました。
ジュニアNISAの未成年口座の開設等をすることができる年齢要件をその年の1月1日において18歳未満に引き下げられました。上記については2023年1月1日以降に設けられる口座等について適用されます。

相続法と相続税法の話題

相続法とは、実は特別の法律があるわけではなく、民法第5編【相続】の条文の総称のことで、「総則」「相続」「遺言」「配偶者の居住の権利」「遺留分」「特別の寄与」などを指します。

相続法の最近の話題

自宅の生前贈与が特別受益の対象外となる「配偶者保護のための持戻し免除」が2019年7月1日から施行されました。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、配偶者に対して居住用不動産の遺贈または贈与がされた場合には、民法903条3項の持戻し免除の意思があったものと推定し、遺産分割においては、原則として、その居住用不動産を特別受益として扱わず計算するようになりました。
つまり、20年以上婚姻期間のある配偶者に居住用不動産を贈与していた場合には、その不動産を遺産分割の対象に含める必要がないので、配偶者はそれ以外の預貯金などの財産についても多く相続できるようになります。

「特別寄与料制度」が2019年7月1日以後発生の相続から適用されました。

相続人以外の親族(6親等内の血族や3親等内の姻族) が無償で被相続人の療養看護を行った場合は、相続人に対して金銭を請求できることになりました。
他の相続人から受けた特別寄与料については、寄与者が相続財産から遺贈により取得したものとみなされて、相続税の対象となります。

「配偶者短期居住権」及び「配偶者居住権」が2020年4月1日以降の相続等に適用されました。

1.「配偶者短期居住権」
遺産分割が終了するまでの期間について生存配偶者の居住権を保護する目的で、相続開始とともに当然に発生し、次のいずれか遅い日までの間、生存配偶者はそのまま無償で居住建物に住むことができます。
①遺産分割により居住建物の取得者が確定した日
②相続開始から6ヵ月を経過する日
上記以外で、遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や、配偶者が相続放棄をした場合などには、居住建物の所有権を取得した者は、いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申し入れをすることができ、配偶者は、その申し入れを受けた日から6ヵ月を経過する日までの間、無償でその建物を使用することができます。
2.「配偶者居住権」
被相続人の死亡時にその被相続人の財産であった建物に居住していた生存配偶者は、次のいずれかの場合に、居住建物を終身または一定期間、無償で使用・収益できます。
①遺産分割において、配偶者が配偶者居住権を取得したとき
②配偶者に、配偶者居住権が遺贈されたとき
この事業承継税制の適用に係る受贈者の年齢要件が、「20歳」から「18歳」へと引き下げられました。

相続税法の最近の話題

「住宅取得等資金贈与に係る相続時精算課税制度の特例」

2021年1月1日より、床面積要件の下限が40㎡( 現行は50㎡)に引き下げられています。(床面積に上限はない)

「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」

①適用期限が2年延長され、2023年3月31日までの贈与について適用されます。
②相続等により取得したものとみなされる管理残額について、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課税される場合には、
当該管理残額に対応する相続税額について、相続税額の2割加算の対象となります。

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等について、以下の変更を講じたうえで適用期限
が2年延長され2023年12月31日までの贈与について適用されます。
①非課税限度額
・良質な住宅用家屋(※)【現行】消費税10%  1500 万円(左記以外 1000 万円)→【改正】1000 万円
・上記以外の住宅用家屋【現行】消費税10%  1000 万円(左記以外 500 万円)→【改正】500 万円
※) 良質な住宅用家屋とは、㋐省エネルギー性の高い住宅㋑耐震性の高い住宅㋒バリアフリー性の高い住宅のいずれかの
性能を満たす住宅をいう。
②適用対象となる既存住宅用家屋の要件変更
 適用対象となる既存住宅家屋の要件について、建築年数要件を廃止するとともに、新耐震基準に適合している住宅家屋
であることが要件に加えられた。